東京オリンピックのエンブレム問題の騒ぎから半年ほどが経過しました。現在、東京オリンピックの組織委員会では、候補作品を4点に絞り込み、国内外の商標調査などを経て、春頃には新エンブレムが決定する予定とのことです。桜の咲く頃には新しいエンブレムが決まるとよいですね。
さて、今回のエンブレム問題は、東京オリンピックの開催に大きなダメージを与えました。しかし、普段あまり意識されていない著作権および知的財産について考えるきっかけを与えてくれる機会にもなりました。著作権、商標、また不正使用について、これほど注目を浴びることはかつてなかったことだと感じています。
今回の件で、「ネット上にある第三者の著作物をパクる(無断で使用する)ことはNGなんだ!!!」ということが広く世間に伝わったのであれば、著作物を管理運営する我々エージェンシーやコンテンツ制作者にとっては、プラスとなる事例となりました。
この中で、私たちにとって残念だったことは、広告業界で実績のある著名なデザイナーでありながら、他人の著作物の権利を軽視して不正な使用や疑惑をもたれてしまった一連の問題です。デザイナー自身も認めていましたが、他人の著作物をネット上から許可を得ることなく無断で使用していたのです。
具体的な例として、空港の写真を合成用に使用していたことや、渋谷の街頭にエンブレムを合成した使用です。これらは、ブログや海外の旅行サイトから盗用した写真でした。
空港や渋谷の街頭の写真は、ストックフォトエージェンシーでリサーチをすれば見つけることも容易でしょう。同じような画像を使用することは難しいことではなく、通常の業務をしていれば問題はなかったように思える内容です。ストックフォトの中には、写真に加工をして合成する素材としても許諾されている写真もあります。リサーチをしてからカンプデータを入手して、制作を進め、その時点で購入することで初めて公表、公開することができます。これらの作業は別段、難しいことではありません。
おそらく、その作業をする時間、手間と費用を仕事の一部としてみなかったのでしょう。結果、この行為は、著作権法違反となりました。
「デザイン業界ではよくあります」というようなことも聞こえてきましたが、不法行為が常識というのは、未だに信じ難い事象でした。
広告や出版物、WEBの世界では、著作物、著作権とは切っても切れない密接な関係の中で制作をしなければなりません。改めて、こうした業界で働くすべての人に、著作権の大切さを考えて欲しいものだと強く希望します。ネット上に存在するコンテンツは、勝手に利用することはできないのです。
もし、写真やイラストを使用する際にわかりにくいことがあれば、各著作物を保有、管理しているエージェンシーやカメラマン、著作者に、尋ねてみるようにしましょう。難しい作業ではありませんので、あとで大変なトラブルになるよりはマシと思って、事前確認をするようオススメします。
2016/2/1
JPAA総務広報委員会