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イメージワークス株式会社

会社名

イメージワークス株式会社

代表者氏名

小森谷 典穂

所在地

東京都港区南青山2-15-5 FARO 1F

WEBサイト

https://www.imagewerks.jp/
https://imagew.net/

お問い合わせ先(info)

info@imagewerks.jp

取扱商品

写真、イラスト、動画

取扱写真点数

3万点

主要ブランド

imagewerksRF, imagewerks motion

主力商品

ジャンル>>カテゴリー
人物写真>> ビジネス、ライフスタイル、シニア
風景写真>> 東京、富士山、自然、360度写真、アブストラクト
CG・イラスト>> ビジネス、アブストラクト(抽象)、干支
動画>> 東京、タイムラプス動画

プロフィール

風景写真や風景動画、タイムラプス動画、人物写真やイラスト・CGコンテンツの制作・販売提供を行っています。撮影のご依頼等も、お気軽にお問い合わせください。

株式会社ジー・アイ・ピー

会社名

株式会社ジー・アイ・ピー

代表者氏名

倉持 博

所在地

〒150-0001 渋谷区神宮前2-33-8 原宿ビューパレー1103

WEBサイト

なし

お問い合わせ先(info)

h-gip@deluxe.ocn.ne.jp

取扱商品

写真

取扱写真点数

10,000点

主要ブランド

特に無し

主力商品

風景写真、人物写真、イメージ写真等

プロフィール

企業カレンダー、装丁、マーチャンダイジング、写真展の開催、海外フォトフェアへの出展等を通じて国内外の写真家さんの作品を紹介しております。個々の案件に必要な著作権取得のコーディネートもしております。

第11回JPAAフォーラム開催。「最新の法改正とそれをとりまく状況」を野間自子弁護士と意見交換

2019年4月11日(木)、第11回JPAAフォーラムが東京・銀座で開催されました。今回のテーマは「最新の法改正とそれをとりまく状況について」。昨年末のTPP(環太平洋経済パートナーシップ協定)整備法の施行により、著作権の分野でどのような変更が起こるのか、ストックフォト事業会社で気にするべきポイントについて、三宅坂総合法律事務所の野間自子弁護士によるレクチャーがありました。フォーラムの様子をお知らせします。

TPP発効による変更とは

まず、2018年(平成30年)12月30日にTPPが署名され、同日にTPP整備法が施行されました。これに伴い、著作権については保護期間の延長と、一部の罪の非親告罪化が変更されました。

①保護期間の延長
従前の著作権の保護期間は死後50年でしたが、死後70年に延長。なお、起算日は亡くなった日や公表日ではなく、それらを含む年の翌年1月1日からなのでご注意ください。保護期間を過ぎた著作物は、パブリックドメインとなって自由に利用できます。

保護期間の延長
②著作権侵害をした場合の、非親告罪の追加
技術的保護手段の回避を行うことをその機能とする装置・プログラムを公衆に提供する行為、脱法的なソフトウェアを販売する行為、死後の人格権侵害、引用の際の出所明示義務違反などはもともと親告罪ではありませんでした。これに加えて、下記の行為が非親告罪化しました。今回非親告罪に追加されたものは下記の通りですが、一例を挙げると、映画の違法な頒布など財産上の利益を受ける目的で有償の著作物を公衆送信等する行為などです。

今回追加された非親告罪

デジタル・ネットワーク技術の進展による著作権法への影響

2019年(平成31年)1月1日に、改正著作権法が施行されました。これは昨今のデジタル・ネットワーク技術の進展で発生した新しいニーズに的確に対応するための改正です。そのニーズに対応するため著作権者の許諾を受ける必要のある範囲を見直したものです。

野間先生「今回の改正は、①情報関連産業、②教育、③障害者、④美術館等、の4分野で柔軟な権利制限規定の整備が行われました。本来、著作権というのは、他人の著作物を利用する場合には当該著作権者の許諾が必要ということですが、4分野については法律の定める一定の範囲の利用について許諾が不要になったということです。
無制限に利用していいということではなく、それぞれ利用規程制限がありますので、以下の表をご覧ください」

利用制限規定の分類

それぞれの分野の改正について、野間先生に詳細を解説していただきます。

教育関係の改正について

野間先生「教育というのは次世代を担う人材を育てるという非常に公共的な意義がある分野であり、文化の発展に寄与するためには教育を充実させる必要があるというのは言うまでもないことです。そのような教育の公共性を鑑みて、権利者の方にある程度我慢していただこうというのが法の趣旨です。
学校が授業の過程で著作物を利用する際、複製についてはもともと無償でありこれは今後も続行されます。公衆送信については、現在は個別に権利者に許諾を得て補償金を学校側で支払ってきました。その負担を軽減して簡易な仕組みを作ろうとするのが、今回の改正の大きなポイントです。
要件を満たすのは、①非営利の教育機関で、②その教師か生徒が、③授業で使用する目的で、④著作権者の利益を不当に害しない、という4つで、これがそろった場合は無償・無許諾の公衆送信が許されることになりました」

①の非営利の教育機関には私立の学校法人も含まれますが、株式会社が運営している予備校や塾はこれに入りません。③については、授業で使うためにテレビ番組を録画したり、ゼミで使用するためのコピーはOKということです。④については、鑑賞に堪えるような形での複製は許されておらず、ドリルやワークブックなどは営利事業に属するので無償・無許諾では使えません。

学校等教育機関における複製等(35条)

さらに今回の改正で国が考えているのは、これまで各学校が個別の権利者に支払っていた補償金を一定の団体にまとめて払うようにし、その団体が権利者に分配するという仕組みを作ることです。これが実現すると、学校は一定の補償金をその団体に払えば済むので、これまで個別の権利者に対応していた手間が大幅に軽減されるというわけです。

この指定管理団体として設立されたのが、SARTRAS(サートラス=一般社団法人授業目的公共送信補償金等管理協会 https://sartras.or.jp/ )です。社員に名を連ねているのは新聞教育著作権協議会、言語等教育著作権協議会、視覚芸術等教育著作権協議会、出版教育著作権協議会、音楽等教育著作権協議会、映像等教育著作権協議会ですが、構成員のほうを見ると、たとえば映像等教育著作権協議会はテレビ局、言語等教育著作権協議会はシナリオと脚本家に当たりますが、映画などは現段階では含まれていないようにも見えます。また写真に関しては、日本写真著作権協会が入っているのみです。従って、まず協議会は、新聞、言語、視覚、出版といった分野ごとに作り、そこから構成員を作ろうとして未完成の段階であるという印象があります。

SARTRAS社員一覧

他に、この仕組みにおいてはどのような問題が考えられるのでしょうか。

野間先生「問題点は2つあります。1つは、学校においての個々の利用を把握するのは極めて困難ですので、権利者への分配は本当に可能なのかという疑問があります。写真で言えば、現段階で構成員に入っている日本写真著作権協会に未加入の写真家だと、それこそ自身の作品の使用状況についてはわからないので、分配に預かれない可能性があるのではないかと思います。また、そもそも構成員団体への分配の割り振りも難しく、平等な分配の実現が本当に可能か疑問です。
もう1つは、JPAAに加入されている会社のサイトに掲載されている写真などは、学校に利用される可能性が非常に高いと思いますが、JPAAの会員会社は著作権者ではなく、写真家から写真をお借りしてサイトに載せていることが多いので、権利者への分配にはあずかれないと思います。エージェンシーのサイトは利用される可能性が極めて高いのにエージェンシーには分配金は支払われない。これは一方的に、著作権というよりは営業権の一部が奪われる形になっているのではないかと。分配金には、権利者への分配と著作権保護事業を育てるために著作権の保護に関する事業への分配というの2つがあるので、JPAAの写真文化に対する貢献を考えると共通事業目的への支出にあずかれないだろうかと思います」

これまでは権利者に対して許諾を得て使用料を払っていたことが、今後は無償・無許諾で使えてしまうとなると学校関係から支払われていた部分がなくなってしまうため、写真エージェンシーの市場の縮小につながる恐れがあると先生は警鐘を鳴らします。

分配の方法や仕組みについて情報が十分に開示されていないこともあり、権利者に本当に平等に分配されるのか、またそもそも分配する仕組みがあと1年弱で構築できるのか、懐疑的な部分はまだ多くあるということでした。

情報関連産業関係の改正、どこがポイントか?

次は情報関連産業関係の改正についてです。これもデジタル・ネットワークの進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備となっていますが、今後の技術の進展に対応するためにある程度抽象的な文言を用いて包括的な規定にしています。この改正によって、市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービス等のための利用が許諾なしに行えることになりました。

野間先生「本来、著作物というのは、それを人が読んだり見たりして、知的好奇心を満たしたり、感激したりつまらないと思ったり、というためのものですが、そういった人の感情に関わらない利用については許諾がいらないとしたものです。その対象はAIの深層学習とか情報解析のために必要な限度で行う著作物の複製で、たとえば論文剽窃検証サービスや盗用写真検証サービスは、この条文によって、解析のために必要な著作物の利用は許されるということになります。論文剽窃検証サービスの場合は、どの論文から盗んだかどうかを検証するために膨大な論文を複製してコンピューターが探し当てますし、盗用写真に関しても元写真と違う写真を検証するために複製する必要があるということになります」

つまり、英米法のフェアユースに類似した総合判断の余地があるような立て付けで規定にしたということになります。
そうなると、たとえばある開発目的で写真をパッケージとして企業に提供するサービスはどうなるのだろうかという問題が出てきます。すなわち画像を取り込んで認識するようなAIのプログラムを作りたいとき、現状ではJPAAの会員企業から何万点もの写真を渡すというようなビジネスを行っていますが、今後はクライアント側でサイトから勝手にデータをダウンロードできしてしまうことになったら、このサービスは不要になってしまうのでしょうか。

野間先生「クライアント側でこのような写真自体の探索は大変な労力がかかりますからこのビジネス自体はなくならないのではないかと思います」

写真の不正利用について、著作権者であれう写真家だけではなく、写真エージェンシーも何らかの請求ができるでしょうか。

野間先生「写真の不正利用に関しては、技術的には、仮想通貨のように写真に識別記号のようなものを付着させて、使用履歴や誰がダウンロードしたかを追えるようなシステムができたらいいですね。
法律自体の措置としては、写真の不正利用について、写真エージェンシーは、営業権侵害を理由として、損害賠償や差止めを求める余地があるように思います(民法第709条など)。大量の写真をコピーされたときに、損をするのは著作権者である写真家だけでなく、エージェンシーもです。エージェンシーが大量の画像をわかりやすく分類してサイト上にアップしたという労力が使われていて、それには固有の営業権があると。したがって上記のような請求ができる可能性があると思います」

その他の対象への、著作物利用の拡大

他に許諾なく利用が認められるようになったものとして、電子計算機における利用があります。これは、効率的に行うという目的で、電子計算機の利用に必要だと認められる限度において可能です。ただし、著作権者の利益を不当に害さないとされるときのみです。たとえば、検索サービスでその検索を行うのに必要な限度で著作物を複製したり送信したりする場合です。書籍検索サービスやインターネット情報検索サービス、写真検索サービスなどが含まれます。

それから、障害者の情報アクセス機会が広がりました。点字については今も許諾が必要ですが、書籍を録音したものを自由に複製できる対象として、視覚障害者だけでなく視覚以外の障害によって書籍を読むことができない人も含まれるようになりました。

また、著作物の利用を促進するため、アーカイブの検索のために著作物の表示をすることも適法になりました。

不正利用を見つけた場合

もし不正利用を発見したときは、どのように対処すればいいのでしょうか?
野間先生から的確なアドバイスをいただきました。

野間先生「違法な使用に対する請求としては、最初にメールや内容証明で警告書を発送して交渉し、合意書を締結するか、合意に至らなければ必要に応じて訴訟をすることになります。交渉過程でよく相手方が、『自分はインターネットのフリーサイトから取ったものであって過失はない』とか、『故意・過失は侵害を主張する側が立証すべきなんだから請求する側でこっちの故意・過失をちゃんと立証してください』と主張することがあります。
これに関しては、東京地裁の平成27年4月15日判決で事実上立証責任が転換されています。この判決は、『フリーサイトから入手したとしても識別情報や権利関係の不明な著作物の利用は控えるべきことである。この場合は著作権を侵害する可能性があるから』と明確に述べています。さらに、侵害の可能性があるのを知っていながらあえて複製した場合は、単なる過失ではなく、少なくとも未必の故意があったと認めるのが相当であるともこの判決は述べています。
エージェンシーが自分のサイトから取られた写真だと主張する場合、相手が上記のような主張をしてきたら、この東京地裁の判例を出して反論をすればいいと思います」


野間自子(のまよりこ)
野間自子(のまよりこ)
弁護士。三宅坂総合法律事務所所属

profile
慶応義塾大学法学部卒業、ワシントン大学ロースクルール修士課程修了。1986年に弁護士登録後、1999年に三宅坂総合法律事務書パートナーに。2007年からは日本知的財産仲裁センター委員会の委員に。2014〜2015年には、日本知的財産仲裁センターの副センター長、2016〜2017年には同センター運営委員会委員長を、2017〜2018年には同センターセンター長を務める。主に知的財産権法、会社法などを取り扱うことが多く、企業法務・企業買収などのサポートも。


株式会社アートバンク

会社名

株式会社アートバンク

代表者氏名

來田 淳

所在地

〒604-8106 京都市中京区御池通堺町丸木材木町670番地の1
吉岡御池ビル6階

WEBサイト

http://www.artbank.co.jp/stockillust/index.shtml

お問い合わせ先(info)

075-255-5555(代)

取扱商品

イラストレーション、衛星画像、デザイン書道

取扱写真点数

約13,000点

主要ブランド

©ARTBANK

主力商品

イラストレーション

プロフィール

訴求力のあるハイレベルなヴィジュアル素材を厳選し市場のニーズに応える、イラストレーションを専門とする写真エージェンシーの元祖です。(創業1988年)

第10回JPAAフォーラム開催。「写真利用における最新の不正傾向」を、野間自子弁護士と語る

2018年2月23日、第10回JPAAフォーラムが東京・銀座で開催されました。今回のテーマは「写真利用における最新の不正傾向」。Web発信のメディアが増える昨今、写真の使用も広がっており、それに伴って不正使用も頻繁に起こるようになりました。そこで、パブリックドメインの期限やネットメディアにおける写真利用など最新の動向を踏まえつつ、三宅坂総合法律事務所の野間自子弁護士からレクチャー。活発に意見交換を行いました。

JPAAフォーラムの様子

パブリックドメインとは、どこまで使用を許されるのか?

パブリックドメインというのは、著作権などの知的財産権が発生していない、または消滅した状態を指します。著作物を使用するにあたり、「パブリックドメインだから使ってもいい」との認識がありますが、実際にどのような使い方なら許されるのか、また許されない使用方法はあるのかなどについて、野間先生からお話がありました。

野間先生「著作権の保護期間は、国によって違いがあります。日本は、亡くなった日の翌年の元日から50年(映画のみ公表後70年)。台湾や韓国、フィリピンやベトナムなどアジア各国は50年が多く、アメリカやEU諸国、オーストラリアは70年、メキシコは100年。逆に、ソマリアやナウルのように、著作権のない国もあります。
著作権の保護期間が切れていれば使用は自由ですが、インターネットは世界同時に見ることができるので、たとえば日本で見る場合は著作権保護期間が切れていればいいのですが、アメリカではまだ保護されている期間であった場合、その国の保護期間に照らし合わせて使用した方がいいでしょう」

また、浮世絵などをデジタルで複製して販売した場合でも、浮世絵がパブリックドメインであれば著作権法上は問題がないこと、アート作品だけでなく同様に著作権が切れた写真などもデータ化しての販売も自由との見解が示されました。ただしその際に、販売された側に対して使用の注意などが明示されており、それを逸脱した場合は著作権ではなく契約違反などで不正使用した相手を糾弾することが可能とのことです。

写真の場合は類似カットもありますが、明らかに別の写真であると識別できるのであれば類似の別カットと認定されますが、そうでない場合は同じ写真だと見なされることもありうるのです。

ネットメディアであるYahoo!やLINEなどを、報道機関ととらえることができるのか?

ネットメディアであるYahoo!やLINEなどを、報道機関ととらえることができるのか?

野間先生「著作権法第41条に照らし合わせると、いわゆる新聞社や放送局ではなくても、たとえば個人であってもニュースを人に伝達したいと思って編集がなされたのであれば、著作権法上は報道であるとみなされます。ですので、Yahoo!やLINEで発信されたニュースは報道であると考えます。発信元がいわゆる報道機関であるかどうかは関係ありません。
では報道というのはどういう定義かというと、『時事の事件』=現在または現在と時間的に近接した時点の出来事のみ、『報道する』=事件や事実を取材し編集し、発表ないしし伝達すること、『方法』=写真・映画・新聞・雑誌・有線放送・Webサイト等(個人レベルの必要な報道も含まれるとする考え方が有力)、『目的上正当な範囲内』=スポーツや劇場の中継はNG、必要性・態様・量的な側面から判断、が条件として挙げられます。
たまたま画像の背景に他の著作物が入ってしまった場合、報道であれば著作権者の承諾は不要です。仮に人の顔が写っていたとしても、公共の利害に関することで公益目的であり、公表内容が相当であるという場合は、肖像権についても許諾がいらないと考えられています。ソーシャルメディアに掲載された場合も、著作権法第41条と肖像権の使用に照らして、許諾が不要とされることがあります」

報道と写真

報道と写真

他に、ドキュメンタリー映像は上記の条件に照らした場合、報道には該当しないとされます。報道の対象が政治家の場合は、それ自体が公益性が高く、国民の知る権利を優先させることもあるとのこと。犯罪者の報道の場合は、刑法を犯している段階で人々に警告する意味で伝えてもいいとされています。ただ、犯罪者が未成年者であると、可塑性があるためにそこまで暴露するのは人権侵害になるのではとの論争もあるのが現状です。
また逮捕後に裁判を経て被告人がもし無罪になったら、逮捕時に顔が出てしまうのは問題があるかもしれませんが。

ネットメディアにおける写真の引用は、どこまでが許されるか?

ネットメディアにおける写真の引用は、どこまでが許されるか?

引用と称して写真を使われることが増えてきていますが、どういう条件で引用が認められるのか、またそこに問題は発生しないのかについて、教えていただきました。

野間先生「引用については著作権法32条に規定されており、その条件を満たせば著作権者の許諾なしに引用できることになっています。ただ写真などの場合は、一部ではなくほぼ全部が引用されるため、32条の中でも『自分の著作物と引用する著作物とが明瞭に区別されていること』『自分の著作物が主、引用される著作物は従の関係があること』という、公正な慣行に合致しているかが重要です」

引用

野間先生から、最近の動向として3つの事例が紹介されました。
1件目は、オークション用カタログ事件。これは、オークション会社が主催するオークション用のカタログにピカソ等の作品の写真を掲載したもので、引用についての合理的な理由がないとみなされて、日本円で8,000万円近い賠償金を支払うという判決が出ました。

2件目は、リンクについて。日本では侵害コンテンツへのリンクであってもリンク自体は公衆送信権侵害に当たらない(著作権法第47の6)とあり、原則としてリンクは自由です。ですが、雑誌『Playboy』に掲載予定の未公開写真を閲覧できるWebサイトへのリンク(許諾を得ていない)について、EU司法裁判所でこれは著作権侵害に当たると判決が出ました。リンクがあることによって情報が拡散することもあり、必要不可欠な行為のためにどこまでリンクを貼る行為を制限するかの論争にもなりました。

3件目は、リツイートについて。ある写真家の写真が無断でアカウント画像に使用(①)され、さらに画像付きツイートの一部として使用(②)したためタイムラインにも表示。それがリツイート(③)され、発信者情報の開示をツイッター社に求めたという案件です。この場合、①と②については著作権(公衆送信権)侵害、③はデータが送信されずリツイートによって利益を得ているわけでもないため、著作権侵害には当たらないとされました。

エンターテインメント目的の場合、たとえば小説の一部などについては、その要件を満たせば引用が認められることがありますが、猫の動画など他人の著作物を集めて再構成したものは引用とはされず原則として許諾が必要となります。

また写真の引用については、主従の関係を強調したいために高画質を低画質に、カラーをモノクロにするなど手を加えると、これは引用の条件を満たさなくなる可能性があります。低画質化については程度問題ですが、トリミングなどをしても「公正な慣行」に合致しなくなると考えられます。

JPAAフォーラムの様子

まとめサイトへの対応はどのようにすればいいのか?

ネットのまとめサイトでの写真の不正利用の動向や、インスタグラムやブログなどで個人が勝手にストックフォトの写真を使用したり、フォロワー数の多いタレントやブロガーへの注意喚起をどのようにするかについて、意見が交わされました。

野間先生「まずまとめサイトに関しては、DeNAの医療情報まとめサイト『WELQ(ウェルク)』をはじめ10のサイトが閉鎖された事例を挙げます。誤った情報の発信や、引用の範囲を満たさない画像使用が約75万件あったということです。まとめサイトというのは時事の報道には該当しないので、許諾を得ないで引用を行うのは認められないかと。
ブロガーなどについては、有名な方であればそれで広告収入を得ているので、有名であるほど著作権などを守っていただきたいですし、あまりにもひどい場合は損害賠償や掲載差し止め請求などを行ってもいいのではと思います」

裁判になった場合、公正な慣行に合致しているかを見られることが多いそうです。主従の逆転や、誰の著作物かがわからないことが問題になるため、出所の明示がされていないものについては、積極的な注意喚起が必要です。


野間自子(のまよりこ)
野間自子(のまよりこ)
弁護士。三宅坂総合法律事務所所属

profile
慶応義塾大学法学部卒業、ワシントン大学ロースクルール修士課程修了。1986年に弁護士登録後、1999年に三宅坂総合法律事務書パートナーに。2007年からは日本知的財産仲裁センター委員会の委員に。2014〜2015年には、日本知的財産仲裁センターの副センター長、2016〜2017年には同センター運営委員会委員長を、2017〜2018年には同センターセンター長を務める。主に知的財産権法、会社法などを取り扱うことが多く、企業法務・企業買収などのサポートも。


参考

参考

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アジアの、アジア人による、アジアのための通信社 『PANA通信社と戦後日本』の著者にインタビュー

トップ画像:ベトナム戦争・アンケイ渓谷で作戦に従事した米軍第101空挺師団。負傷した戦友に肩を貸す(1966年、ベトナム)

かつて「PANA通信社(パン・アジア・ニュースペーパー・アライアンス)」という名の報道機関があったのをご存知でしょうか。創立者は第2次大戦後、戦勝国の特派記者・カメラマンの一人として敗戦国・日本にやってきた中国系アメリカ人の宋徳和(ノーマン・スーン)。「アジアの、アジア人による、アジアのための通信社」を標榜して1949年に設立され、朝鮮戦争やベトナム戦争などの報道で大きな足跡を残しました。

その後、時事通信社の経営傘下に入り、2013年には「時事通信フォト」に社名変更して「PANA」の名は姿を消しました。長年、JPAAの会員社でもあった「PANA通信社」とは歴史上、一体どんな存在だったのか。このほど「PANA通信社と戦後日本」(人文書院)を著した中部大学講師の岩間優希(いわま・ゆうき)さん=メディア学、国際関係学=にお話を伺いました。

PANA通信社と戦後日本

「PANA通信社」研究に入られたきっかけは?

岩間:私はメディア史を専攻する中で、戦争報道を研究したいと思い、史上唯一と言っていいくらい自由な報道が許されたベトナム戦争をテーマにするようになりました。その過程で、継続してベトナム戦争を報道した初の日本人ジャーナリストとして岡村昭彦の存在を知り、彼が「PANA通信社」の契約カメラマンだったことから、「PANA」のことも調べるようになりました。

― 創立者の宋徳和さんとはどのような方ですか?

岩間:客家系の中国人を両親として1911年、ハワイに生まれました。英語で教育を受け、北京(当時は北平)の燕京大学に進学。ここで客員教授を務めていた米ミズーリ大学ジャーナリズム学部のフランク・マーティンに出会い、その教えに感銘を受けてジャーナリストを目指します。ミズーリ大に留学後、中国に戻って英字紙などを経て、国民党系の「中央通信社」(以下「中央社」)に職を得ました。第2次大戦後、「中央社」の東京特派員として来日したのを皮切りに、1962年までの17年を日本で過ごします。

― 宋さんは日本や日本人にどのような印象を持っていましたか?

岩間:宋さんは戦前から日本人とのかかわり、交流はありました。その時に接した日本人は本当に平和的で、知識もあって素晴らしい人たちだったのに、戦争中の日本軍の残虐ぶりを見ていると本当に強欲で、あれが同じ日本人なのかという印象を持っていたようです。ところが敗戦後、来日して農民だったり、商人だったり、政治家だったり、いろんな層の日本人と接して、本来勤勉で親切な日本人が戦争に突き進んだのは、よい政治的指導者がいなかったことと、よい報道機関を持つことができなかったためだと考えたんです。

― 本の中には、東條英機元首相が東京裁判で絞首刑を宣告された時、奥さんと娘さんをマスコミの目から逃すため、宋さんが自宅にかくまったというエピソードが紹介されています。

岩間:宋さんは政治的立場、国籍、民族にかかわらず、人間同士として人と接することができた人です。東條元首相のご家族の件も、苦境の中にある人たちを助けたいという気持ちだったと思います。その時のことを自身で記事にすることは一切しませんでした。そういう宋さんの人間性を戦後日本の政治家や財界人たち、例えば白洲次郎や鳩山一郎元首相なども高く評価していました。

「PANA通信社」設立のきっかけは?

岩間:一番大きかったのは1949年の中華人民共和国の成立です。共産党に敗れた国民党とともに台湾へと移らざるを得なくなった「中央社」もかなり規模が縮小し、今までのような形での報道はできなくなった。東京支局は大きな変更はなかったようですが、宋さんにとっては「中央社」の先が見えないというのが(転身を考えた)一番大きな理由だったと思います。それに宋さん自体、非常に世界的視野を持った人ですから、国民党の機関である「中央社」でというより、もっと自由な立場でアジアの激動を伝える必要性というのをずっと考えていて、そのタイミングで新しい通信社を立ち上げることを決意したんですね。

― 「アジア人による、アジアのための通信社」というのは宋さんの理想ですか?

岩間:当時は、アジアの国々がそれまでの欧米などの植民地支配から次々独立したりしている状況です。正にナショナリズムの高まりの時期でもありました。ただ、どの国もやっぱりまだ独り立ちした直後で非常に脆弱ですから、そうした国家同士が協力し合って列強からの干渉というのをはねのけていかなければいけない、また、それぞれの国内の共産主義勢力とも対峙しなくてはいけないということがある。そうするための手段、枠組みとして、アジアの国々が団結し、それがアジア人による新しい試みとして注目されていました。その流れの中で、有名なところでは1955年にインドネシアで開催された「バンドン会議」がありますが、そこで謳われた反帝国主義、反植民地主義、そういう思想と「PANA」を作った宋さんの考えは同じ潮流にあったと思います。

朝鮮戦争~米軍の仁川上陸作戦(1950) (時事通信フォト提供)
朝鮮戦争~米軍の仁川上陸作戦(1950)
(時事通信フォト提供)


― 
「PANA」の「アジアのための」報道とは具体的にどのようなものでしょうか?

岩間:何か出来事があった時に、アジアのその地域にどういう影響があるのか、そこに住んでいるアジアの人たちがどう考えているかとか、庶民、一般国民にどういう影響があるかみたいなところも「PANA」は報道に取り入れていたようです。欧米の通信社や報道機関だと、アジアのその国の発展を思って書かれる記事なんて当時はほとんどなかったでしょう。そのあたりを、アジアの記者が現地の目線でとらえ、どういった選択をするのが地域の人たちにとってよいか、あるいはある事実や決定が現地にどういう影響があるか、そういった視点を「PANA」は重視していたと考えています。

― 「PANA」は東京以外にアジア各地に31もの支局を擁するなど広範なネットワークを持っていたそうですね。1963年には岡村昭彦さんをベトナムに送り込み、サイゴン支局を開設しています。

岩間:バンコクでの取材を望んでいた岡村さんにベトナム行きを強く勧めたのは、「PANA」シンガポール支局長だった陳加昌さんという方です。ベトナムは1954年に独立戦争に勝利し、フランスは撤退しますが、陳さんは1956年から長期に渡り現地を何回も取材されていて、要人にもインタビューを重ねています。フランスに代わり、アメリカが軍事顧問団を送り込むようになり、1960年には南ベトナム解放民族戦線が設立される。事態がどんどん泥沼化していく中で、アジアの中でベトナムが最も重要なニュース発信地になる、というのは早い時期から陳さんには見えていたわけですね。その時点で日本人も日本のメディアも気付いていませんでした。

― 陳さんのサポートもあって、岡村さんの解放区への潜入ルポという世界的なスクープが実現したのですね。

バンドン会議~報道陣に囲まれる中国の周恩来首相(1955)(時事通信フォト提供)
バンドン会議~報道陣に囲まれる中国の周恩来首相(1955)
(時事通信フォト提供)

メディア史における「PANA通信社」の存在意義は?

岩間:個別の事例で言えば、岡村さんがベトナムに入り込み、現地の状況を報道することによってベトナムの民衆のことを日本人が知ることができた。これは「PANA」のネットワーク、アジアのネットワークがなければできなかったことです。1964年の東京五輪の時でも、「PANA」のカメラマンはAPなどのカメラマンがトップのアスリートを撮影している横でたとえビリでもアジアの選手を撮っているわけですね。それが本国の新聞に載ることでアジアの人たちは自国選手の活躍を見ることができた。「PANA」の取材がアジアにとって重要な情報になったというのがわかります。もう少し大きな観点で言うと、「PANA」はアジアのジャーナリストたちがいっしょになって起こした、おそらく史上初の事業なんです。規模と形態から言うと史上唯一と言っていいでしょう。最終的に理想通りにはいかなかったとしても、今後、アジアの人たちが集まって何かやろうという時に、「PANA」の体験や歴史というのは非常に大きなものだと思います。

― 21世紀に入り、中国の超大国化、北朝鮮の核武装化による緊張などアジア情勢は日々、世界から注目されています。このような時代に、同じアジアの報道機関、メディアが果たすべき役割は?

岩間:報道において対立を煽ったり、相手国のことを悪く言って、自国を称揚するようなニュースというのは、一時的には人気を集めても、長期的には社会に取り返しのつかない損失をもたらすことをメディアはぜひ考えてほしいですね。そうではなく、考え方が違う同士が議論をするという企画を促進することがメディアのひとつの役割としてあると思います。「PANA」のようなプロジェクトは、通信社という形態としては難しいかもしれませんが、例えばアジア何カ国かの記者がいっしょにどこかを取材して、それぞれの目線で書いた記事がひとつの新聞に載ると、こんなにとらえ方が違うんだっていうのが分かりますし、そういう企画があったら面白いんじゃないでしょうか。

― どうもありがとうございました。


岩間優希(いわまゆうき)

岩間優希(いわまゆうき)

profile
愛知県生まれ。中部大学国際関係学部を卒業後、同志社大学でメディア学を専攻。その後、立命館大学の博士課程に編入し、「ベトナム戦争と日本のジャーナリズム」を研究。2015年から中部大学全学共通教育部講師。主な著書に「文献目録 ベトナム戦争と日本」(人間社)、「戦後史再考―『歴史の裂け目』をとらえる」(共著、平凡社)など。

 


デジタル化が、写真の山を金の鉱脈に変える

毎日、多くの写真を扱う報道機関。これまでに蓄積された写真は、それこそ膨大な量にのぼります。以前、朝日新聞社では、テレビや雑誌など他のメディアからの希望があると、該当の写真をプリントして渡していたそうですが、最近ではデジタルによるアーカイブ化が進み、その利用法も変化してきたと言います。

朝日新聞社の吉田耕一郎さん(デジタル本部コンテンツ事業部/写真事業担当部長)と柏木和彦さん(朝日新聞フォトアーカイブ/次長)に、報道機関における写真の流通事情について昨今の様子を伺いました。

※トップ画像:ISが爆破したヌーリ・モスクの敷地。

新聞社の写真は外部の企業や個人も使えますが、その使用法に変化はありますか。

柏木和彦さん(以下、柏木。敬称略):
以前は写真を使いたいと連絡があったら、プリントして郵送するというサービスを行っていました。大変手間がかかり、またデジタル化の波もあって、2010年に「朝日新聞フォトアーカイブ」というWebサイトを立ち上げました。日付やキーワードで簡単に写真の検索ができるサイト。新聞社が扱う写真の量は膨大で、デジタル化して公開できる枚数は年に約15万枚あり、現在、サイト上では約280万枚の写真が公開されています。

吉田耕一郎さん(以下、吉田。敬称略):
必要な写真がすぐにデータでダウンロードできるようになったせいか、活用方法の幅が増えてきたように感じます。以前はやはり報道使用、テレビや雑誌で使われることが多かったですね。今ではCM、広告、社史など、報道以外の利用も増えてきました。

柏木:メディアだけではなくて、たとえば「今日の出来事」を毎日掲載していくデジタルフォトスタンドなどでの利用も。新聞社の写真をそんなふうに使っていいんだ、という驚きの声もありますが、汎用性が出たというのは大きな動きですね。
新聞社の姿勢としても、写真というコンテンツの重要さにようやく気付いた、という段階です。

2・26事件の様子
2・26事件の様子。

 

凱旋門頂上からのエッフェル塔
凱旋門頂上からのエッフェル塔。

膨大な分量の写真は、どのように保管・管理していますか。

吉田:フィルム時代の写真については、弊社内でスキャンをして、著作権の確認、撮影者、撮影状況など書誌情報と併せてデータにします。現在のデジタル写真については、紙面で使用するために出稿作業を行うと、情報と共に自動的に取り込まれるようになっています。
それらの写真データは、外販できるかどうかを1枚ずつチェックして外部公開しています。写真原本は、スキャンしてデジタル化しても捨てたりせず、倉庫に保管しています。戦前の貴重なネガやプリントなどもありますので、今後は、温度、湿度管理が整っている専用の倉庫での保存も考えています。

――そうした写真の著作権の管理は?

吉田:著作権については弊社が保証しますが、肖像権などそれ以外の権利については使っていただく方に確認してくださいね、とお願いしています。

柏木:特に広告に使用する場合は、注意が必要です。お祭りなど多くの人が集まる場の写真に偶然写っていた人、たまたま背景に映り込んでいた企業の看板など、わりと火種が隠れていることが多いので。

吉田:弊社に許諾を取らないで写真を勝手に使われることもあります。取り下げてくださいと警告を出しますが、全部を探し切れないですし、一般の方から教えていただくこともあってその都度、警告を出すことにしています。不可視のウォーターマークを入れてはいるのですが常時監視していることはできないし、どうやって制御するかはまだ課題です。

――一般の方が撮影した写真につては、著作権の扱いはどうしていますか。

吉田:一般の方が撮影した写真や動画については、著作権はその方にあります。事件現場などでは、撮影者が一般の方、というのはよくあることので、記者は現場に到着したら「まず撮影者を探せ」というのが鉄則です。当然、画像を提供していただくことになります。提供写真は撮影者の許諾が得られた場合のみ販売します。

柏木:提供写真などについては、我々は自由にその写真を使うわけではなく、紙面やデジタル版に掲載していいか、アーカイブで販売してもいいかと一つずつ許諾を得るようにしています。中には、紙面はいいけどアーカイブは拒否されることもありますので。著作権者の意思を尊重するのが最優先されます。

東京五輪物語 白河の聖火リレー
東京五輪物語 白河の聖火リレー。

歴史写真や報道写真の貸し出し対応について、今後の展開をどのようにお考えですか。

吉田:歴史と報道、これは弊社の一番の財産ですね。企業の社史や年表など、何かを振り返るときには起こった出来事と一緒に写真を付けるのがわかりやすいです。山梨県のあるワイナリーではワイン樽が製造年ごとに並んでいて、樽の上にその年に起きた出来事の写真がずらっと並んでいたのが壮観でした。こうやって記事と写真をセットで売ることもできるんじゃないかと気付いたところもあります。

柏木:周年を迎える企業は、大きなターゲットになりますね。何年頃のあの出来事を探したい、となったらWebで検索できるのがやはり便利。特におすすめは1964年の東京五輪の聖火リレーの写真。各都道府県のシーンをそろえました。

吉田:聖火が来ると聞いて、町をあげてお出迎えしていている写真がとても印象に残りました。正装して待っている人達もいて、時代の雰囲気がわかりますよね。
それから、沖縄の戦前の写真も弊社で特集しました。沖縄タイムスと連携して、戦争前に撮影されたフィルムを全部スキャンし直して、写真集にしたり写真展を催したり。

――教科書など、教育関係への写真使用にも力を入れているとか?

柏木:現在、「歴史授業キット」を準備中です。これは、キット内に用意された中から、授業用に写真を自由に選んで使えるシステムです。電子教科書や電子黒板の普及で、教育現場での写真の需要はますます高まっていくと思います。

1935年、沖縄・糸満。漁から帰る夫を待つ妻たち
1935年、沖縄・糸満。漁から帰る夫を待つ妻たち。

新聞社の写真の未来は

吉田:新聞の制作についてはデジタル化が進んでいるのに、写真は紙焼きやフィルムでしか残っていない。以前は編集部門が使う際には1枚1枚スキャンしてデータを取り込んで、という作業がとても大変でした。ですから写真データをデジタル化してアーカイブしたことは、実は社内の需要に応えるためでもありました。デジタル化には、社内でも使いやすく、外販もしやすい、その両面があります。
特に地方紙などではまだ写真アーカイブのデジタル化が進んでいないところもありますが、きちんとデジタル化してサイトで公開すれば社内にも社外にも利便性があることがわかれば、もっとデジタル化が進むのではないかと思います。

柏木:デジタル化には、フィルムを見て理解ができる人材が必要。さらに紙焼きの裏に少しだけ書かれた説明文を元に、どこで何が起こったときの写真なのかを調べなくてはなりません。過去の写真にさかのぼって、計画的にやっていくことが、社内でも再認識されています。

――過去の写真すべてがアーカイブされたら、すごい財産になりますね。

柏木:そうですね。6年ほどかけてデジタル化して、ようやく数がそろってきたところです。膨大な写真は、倉庫に置いてあるだけではもったいなくて、世の中に出て初めて役に立つもの。報道以外の分野でも使ってもらえるとうれしいですし、デジタル化していろいろな場面に使ってもらうというのが、写真の一番の使命なのかなと思います。


吉田耕一郎 / 柏木和彦

profile
吉田耕一郎(よしだこういちろう)=右
1987年、朝日新聞社入社。広島支局、大阪写真部、西部写真部、東京写真部、写真部新潟駐在、東京報道局写真センター(フォトディレクター)などを経て、2012年4月から朝日新聞フォトアーカイブ担当部長。

柏木和彦(かしわぎかずひこ)=左
出版社勤務を経て、1990年に朝日新聞社入社。東京、仙台、福岡でカメラマンとして勤務。他に別刷りの『be』や出版局(現・朝日新聞出版社)で写真セレクトを担当。2010年にフォトアーカイブに異動し、現在は営業担当次長。


多岐にわたる素材と、その魅力を存分に生かすノウハウ

写真やイラストレーションに加え、動画、音など、2500万点以上に及ぶ、さまざまな素材を扱っているアマナイメージズ。ストック素材の内部制作や、新しい分野の素材の開拓など、さらにその領域を広げています。

母体であるアマナのストック事業から2007年に分社化して、10年になろうとするアマナイメージズ。同社が持つ強みと今後の展開について、アマナイメージズの松野正也さん(取締役/クリエイティブディレクター)にお話を伺いましたamanaimages 松野正也

アマナイメージズが扱っているストック素材には、どのようなものがありますか。

まずは、人物のライフスタイル表現のイメージ写真や、国内外を広く網羅する風景写真、専門性の高い自然科学、ファインアート。他にも海外セレブや報道写真など、広告や新聞・雑誌など、さまざまな場面で使われる静止画素材を主力商品として取り扱っています。

弊社は、母体であるアマナが広告制作・ビジュアルコンテンツ制作を行っている会社であり、クリエイティブ系のイメージ写真の品質には強いこだわりを持っているというのが特徴でもあります。たとえば、1枚でそのままキービジュアルになれるインパクトのある写真。利用者のメッセージやコンセプトを代弁できる表現がなされている写真。そういった表現力や高い品質であり続けられていることが、弊社の特徴の1つかなと思います。

他に今、力を入れているのが、サイネージやWeb広告に使われる動画素材。デバイスやインフラ環境が整ってきたおかげで、そういった需要が順調に増えてきています。以前から動画素材は扱っていますが、最近では4Kはもちろん、8K、16Kといった超高解像度動画の問い合わせにも対応するようになりました。

さらに、それらの動画編集には欠かせない楽曲や効果音の素材、ソーシャルゲーム向けキャラクター素材や、建築やエンタメ媒体向けの3Dモデリング素材、デザイナー必須のフォントやベクター素材まで、あらゆるクリエイティブの現場で活用していただける素材を幅広く取りそろえています。特に最近は無料でダウンロードできるベクター素材も多いですが、トンマナがそろわなかったり、実際にデザインのバッティングも多くなりがちかと思います。アマナイメージズでは日本のマーケットでよく使用されるテーマに向けた、オリジナリティの高いベクター素材を多く用意しています。

写真に限らず、日本のマーケットにフィットする弊社ならではの素材を、時代に合わせて常に用意していくことを怠らないようにしています。GOKU/a.collectionRF /amanaimages

もう1つの強みとして、日本人素材が豊富だと聞きました。また、内部制作もされているとか?

いちばん大切なのは、まずは日本の市場に受け入れられるものであること。主に国内の消費者が広告やメディアの受け手となるので、そこに響かないとダメだと思います。ですから、ターゲットとなる日本人に共感し、伝わるクオリティの写真を提供できるかにこだわっています。

「アマナイメージズといえば日本人素材に強い」という印象を保つには、良質な素材を提供し続けなければいけません。取り扱う写真作品全体のクオリティアップを目的に、内部制作も行っています。

撮影は丸一日かけて、5〜6シーンを一気に撮影します。制作スタッフは広告業界全般の分析を行い、その時期にどんな写真の需要があるかを鑑みて、半歩先を行くクリエイティブを行うようにしています。また今までのストックにはない撮り方にも挑戦することで、時代の潮流も表現。そうやって撮影されるものは、ストックフォト慣れしていない、若手の外部契約作家さんのクオリティのベンチマークにもなるわけです。

一日で静止画と動画を一度に撮影することもありますが、今後は動画の内部制作の割合ももっと増やしていきたいですね。apjt /amanaimages

一般ユーザーをターゲットにした施策などはあるのでしょうか。

弊社は、これまで広告表現に特化したプロのフォトグラファーによるプロ向けの写真を多く取り扱ってまいりました。それに加え、2016年には、セミプロからデザイナー、インスタグラマーをはじめとするさまざまなクリエイターの方々が作品を登録する「ForYourImages」というサイトも始めました。このサイトではブログ、企画書や年賀状、個人事業の告知など、あらゆる用途に気軽に利用でき、個人ユースの需要に十分対応できるラインナップとなっています。今後もいろいろなジャンルで活躍するクリエイターが登録して、商品の幅もさらに広がってくると思います。

そういった個人のユーザーに向けては、「写真を探すコツ」をきちんと伝えていくのが今後の課題ですね。サイトを開いて、トップに出てくる検索窓にまずキーワードを入れて探す方が多いと思いますが、それでヒットしないと「このサイトに自分のほしい写真はない」と判断されてしまいます。

写真を探すコツとしては、まず何をビジュアルで表現したいかを具体的に頭の中で絵を描き、その浮かんだ絵を構成するパーツをキーワードに置き換えて検索してみることがおすすめです。たとえば企画書や報告書などに使う、企業の「成長」を表す写真を探しているときには、「成長」だけでなく「積む」「上がる」といった「成長」から連想される言葉や類語も検索してみてください。グラフ上に矢印が上向いたグラフィックが出てくることもあれば、カラフルな本が積み重なっている写真が出てくることもある。どちらも「成長」を表していますが、矢印は勢いのある上向きさが感じられるし、本の重なりはその企業の歴史や歩みなどまで感じさせられる。こうしていろいろな表現の画像を探し出せるようになると、ストックフォトの使い道の広がりやおもしろさも出てくると思います。

最近では、お子さんがいる家庭でフォトブックを作ることが多いですが、その際に手持ちの写真とストックフォトを組み合わせる、というのもおすすめです。フォトブックの表紙や扉に花、風景などの季節や行事のイメージ写真を差し込むだけで、まるで本屋さんに並ぶ写真集のようにグレードアップできます。自分と家族のストーリーにタイトルを付けるように写真を選ぶ。ちょっとしたひと手間を加えることで、親戚や友人に見せたときの伝わり方が変わってきます。写真に触れる楽しさを知っていただけたらうれしいです。

(c) TongRo Images /amanaimages

アマナイメージズの最大の強みを教えてください。

単に一つの素材を売るだけでなく、その素材を使ってクリエイティブ全体を制作する中でのサポートが手厚くできるところだと思います。ライツクリアランスや、被写体の権利者からのクレームや損害賠償請求などのトラブルを解決する無料免責サービスも用意しています。

アマナグループのネットワークを活用すれば、撮り下ろしもできますし、企画から、デザイン、編集、運用、管理まですべて網羅できます。幅広いお客様のニーズをワンストップで解決、高品質で提供できる。それはやはり、広告業界で長く仕事をしてきたアマナとしてのバックグラウンドがあるからということに他なりません。扱う素材も多岐に渡り、アマナイメージズはストックフォトエージェンシーから今や総合ストック素材エージェンシーとなりました。複合的なサービスを含めて、いろいろなプラットフォームと連携したビジネスへの展開を、今後も積極的に行っていきたいですね。


松野正也(まつのまさや)

amanaimages 松野正也

profile
株式会社アマナイメージズ取締役。2007年グラフィックデザイナーとして株式会社アマナに入社、CI/VI開発・制作に携わる。2009年からamanaimages.comのWebデザイン・サイト運営を担当。現在は、主に広告制作マーケットに向けたストック商材のクリエイティブディレクションを担当している。
http://amanaimages.com/


第9回JPAAフォーラム報告。「実践著作権セミナー」をご紹介

2017年2月8日(水)に開催された、第9回JPAAフォーラム。今回は、「これなら分かる! 実践著作権セミナー ~許諾が要るか? それとも無断でできるか? 具体例で考える~」というテーマで、株式会社TBSテレビ総務局ビジネス法務部担当局次長の日向央さんに、講演をしていただきました。

これは、一般社団法人日本映像・音楽ライブラリー協会(JVLA)にご協力をいただき、JVLAが普段行っているセミナーを「実践著作権セミナー」としてJPAA会員に向けてカスタマイズされたものです。なぜこのセミナーを行ったのか、事業委員会担当理事の木下美和子さん(アフロ)にお話を伺いました。

「スマホの普及など機材の進化によって、誰でも簡単に動画が撮れる時代になりました。それはプロのフォトグラファーにとっても同様で、フォトエージェンシーでも動画素材の扱いが増えています。そこで気になるのは、動画素材の著作権について。写真と違う点はどこか、何に気をつけるべきかをフォーラムで会員全体に共有し、今後のビジネスに役立てられるような内容にできないかと考えました。

映像や動画の著作権についてのセミナーを行うにあたってJVLAのご協力を仰ぎ、TBSテレビで、日々、著作権についての諸問題に対応されている日向さんに、トラブル回避の方法をお話していただくことに。映像制作の現場での事例も交えながら、実践的な内容を解説していただきました」

JPAAの会員にとって、動画の著作権について聞く貴重な機会となったセミナーの一部を、抜粋してお伝えします。

映像制作における、著作権について

日向さん映像制作においては、著作権についてのあらゆる知識が体系的に必要とされます。講師を務めていただいた日向さんは、TBSテレビにおいてその著作権関連のマネジメントに携わる法務部に在籍されています。今回は、実例を用いながら、現場の苦労話や裏話などを話していただきました。

映像の制作者は、「権利者」か「利用者」か?

小説をドラマ化する場合、著作権法上では「権利者」と「利用者」が発生します。
「権利者」とは、著作権を持っている者。原作者である小説家・作家が権利者に当たります。権利者は、原作小説を利用したり複製したいと他者が申し出たときに、禁止または許諾をする権利があります。
「利用者」とは、コンテンツを使う側。この場合は、小説を出版した出版社を指します。権利者である作家が使用を禁止すればコンテンツを利用できませんし、許諾が得られれば対価を権利者に支払うことになります。
ただこのとき、ドラマが爆発的に人気になりそれに伴って小説が売れると、出版社は原作者よりも大きな利益を得ることになります。場合によっては、権利者よりも利用者のほうが大金を手にすることがあるということです。

では、ドラマを制作したテレビ局はどちらの立場になるのでしょうか? これは、著作権法上では「映画の著作物」という扱いになり、制作者であるテレビ局は「権利者」となります。権利者は、このドラマを複製したりネット配信するといった「利用」を行う者に対して、禁止権を行使できるのです。
その反面、テレビ局がたとえばこのドラマをDVD化しようとしたときには、音楽の複製や録音の利用、俳優らの実演を録画するなどについて「利用」を行う立場になるため、それぞれの権利者に許諾を得る必要が出てきます。この場合、テレビ局は「利用者」となるのです。

JASRACは、なぜカラオケ店から使用料を徴収できるのか

著作権というのは、17種類の利用方法の個別の禁止権の総称。ポイントとなるのは、「公衆」を対象にして利益を供与される状況で使ったかどうかということです。公衆とは不特定多数または少数、及び特定多数の人を指します。
たとえばある有名歌手が、大学の学園祭でノーギャラで歌ったとしたら。これは、不特定多数に聞かせてはいますが、利益が生まれていないので合法です。親しい友人を集めて、有料で歌ったとしたら。こちらも、利益は生まれましたが特定少数が対象なので、問題ありません。

では、カラオケはどうか。カラオケボックスの中で特定少数である友人に聞かせているだけだから、大丈夫なのではと思いがちです。しかしながら、カラオケボックスの場合は、経営している店が不特定少数の客に対して歌ったことで利益を得ているとの裁判所の判断が出され、JASRACがカラオケ店から使用料を徴収しています。

今、音楽教室からも使用料を徴収することで話題になっていますが、これも先生が生徒に聞かせる、つまり不特定(多数のみならず少数でもよい)の相手に対して音楽を使うことで利益を生んでいるとみなされたためと考えられるでしょう。

建築物における、「権利者」と「利用者」の誤解

通常、「利用者」は、あるコンテンツを使う際に「権利者」が誰であるかを確認し、許諾を得てから利用します。これが権利処理、いわゆるライツクリアランスなのですが、時として権利者が「権利」の範疇を間違ってとらえていたり、権利がないのに権利を主張する例などもあります。
たとえば、著作権と所有権を混同している場合。神社仏閣などの外観を撮影して放送することがありますが、その際に該当する神社仏閣の許諾が必要でしょうか? 本来は不要です。神社仏閣の私有地に入り込んで撮影していない限り、許諾はいらないのです。入り込んで撮影した場合でも、撮影された映像に関し、所有者が権利侵害の主張をできるわけではありません。

同様に、その他の建築物についても外観を撮影して無断で放送できるのでしょうか? 答えは、可能です。著作権法には「建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」とあり、それを受けた項目に「建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合」と定められています。
対象となる建築物と同じ建物を作るという複製はNG。それを売るのもNG。権利は建築の設計者にあり、そもそも所有者には禁止権がありません。その建築物のおもちゃを作って販売し、あるいは外観を撮影して絵はがきにして販売したとしても、著作権の侵害にはならないのです。

商標を放送すると、商標権の侵害になるのか?

放送中、さまざまなメーカーの製品が画面に映り込むことがありますが、製品には商標がついており、それらを放送することは商標権の侵害になるのではないか、という認識がテレビ局の現場にはあります。しかし、商標権とは放送や複製の禁止権ではなく、別の製品にその商標をつけて販売をすると、それが商標権の侵害に当たるというものです。よって、ただ放送するだけであれば商標権の侵害には当たりません。

以前に、一般の人から東京・大阪の放送局に対して「『まいど』を商標登録したので、『まいど』を放送するに当たってはご留意ください」との手紙が届けられたことがあります。この人の場合、「まいど」の登録区分が「放送」であり、これは放送サービスを「まいど」という名前で行うよという意味であり、「まいど」という言葉を使ってはいけないということではありませんでした。

このように、「権利者」と「利用者」の双方に誤解を生んでいるケースはまだ他にもあります。著作権が示す範囲を確認し理解することで、著作権を正しく活用していくことが大切だと考えています。

写真オタクが集まった、写真好きのための会社

広告に使われるクリエイティブ素材だけでなく、スポーツや報道の写真や動画、その撮り下ろしなどを手がけるアフロ。1998年からは日本オリンピック委員会のオフィシャルフォトエージェンシーに認定され、オリンピックの公式写真集の制作も行うなど業務の幅を広げています。今後の展望について、代表取締役社長の青木紘二さんにお話を伺いました。

オリンピックの公式写真集を出されるようになったのは、いつからですか?

1998年の長野オリンピック・パラリンピックからですね。それから20年、2016年のリオデジャネイロで10冊めになります。
選手の顔写真は出発前に撮影。大会期間中は私も含めて弊社から7名のカメラマンが現地に行き、閉会式に出る間もなく帰国して写真のセレクト作業に没頭しました。選手が首相官邸に挨拶に行く前に集合写真を撮るのですが、皆さんは自由というかなかなか集合してくれず、ウチのスタッフ総出で選手をまとめたりする場面もありました。
写真集の発行作業に当たっては、企画、編集、写真手配、レイアウト、印刷まで、すべて弊社で行いました。

オリンピックの現場では、撮影に一番いい場所はテレビカメラの独占状態。フォトポジションは、年々追いやられている印象です。とはいえ、写真には写真の魅力がある。一瞬を切り取った写真には、見る人の想像力をかき立てる力があります。体操の内村航平選手が初めてメダルを取った北京オリンピックの写真を出したときには、内村選手のご両親からお礼の連絡があったほどです。
リオデジャネイロオリンピック日本代表選手団2016

アフロがスタートしたのは、いつのことでしょうか。

最初は、自分の写真事務所としてのスタートでした。1980年のことです。私はそのころスイスに住んでいて、スイスのスキー教師国家資格を取得してからカメラマンになり、世界中を旅していました。旅先で撮った写真がすでにストックとしてあり、声をかけた同業者がスポーツ、特にスキーの写真をたくさん預けてくれました。
最初に広告を打ったときのキャッチコピーが「スキーなら、なんでも」というものでした。当時、山と渓谷社の『skier』という雑誌で年間300ページの制作を担当していたこともあり、スキーの写真があちこちで使われるようになったのです。

1992年にバブルが弾けたとき、弊社だけはなぜか売り上げが伸びました。「アフロだけなぜ?」と取材やインタビューを多数受けたのですが、私の答えは「わかりません」。本当にわからないんですよ。今考えると、最初はスキー、次にゴルフ、風景、そしてクリエイティブの写真、と少しずつ取り扱いを増やしていったら、お客さんも少しずつ増えていったんです。最初から間口を広げすぎず、できるところからジャンルを特化して成長していったのが、大きく失敗しなかった理由なのではと思っています。

報道写真は儲からないという定説があって、最初はクリエイティブだけを扱っていました。ただ以前から、ニュースはやりたかったんです。スポーツは得意なのでスポーツのニュースから取り扱いを始め、芸能をやってから時事写真へ。そうしているときに、長野オリンピックの公式写真集を出すエージェンシーに選ばれました。それまでのスキー写真の取り扱いなどから、ウィンタースポーツの写真はアフロだという認識をしてもらえたこと、またただの報道写真ではなく作品という形で撮った写真を写真集にしたいとオリンピック委員会の方たちに推してもらえたのは、本当にうれしかったですね。
©Iwao Kataoka/AFLO

写真エージェンシーにとっては厳しい時代になってきているようですが、そのことについてどう思われますか。

写真というものがこの世からなくなることはないと思うのですが、機材がよくなったおかげで誰もがある一定のクオリティの写真を撮れるようになりました。これは、プロのカメラマンや写真エージェンシーにとってはビジネスが成り立ちにくく、将来は厳しいと感じます。

動画では、8Kの存在が脅威。あの奥行き感は特別です。この出現は、世の中を変えていくでしょうね。今までとは違って8Kなら静止画を切り出すこともできてしまう。こういった難しい状況であることを真摯に受け止めてやっていくしかない、そこにビジネスチャンスが見出せるのではないでしょうか。

弊社では『死ぬまでに行きたい世界の絶景』や『108の世界遺産』といった本のアイデア出しなども行っています。このようなことができたのは、やはりオリンピックの公式写真集の制作を自社で行ったおかげで、本に関する知見が蓄積できたから。写真をどう使ってもらえばいいかという提案から働きかけることも、今後のエージェンシーの活動を広げるヒントになるのではないでしょうか。

近年は、動画のマーケットも広がってきています。この動画は、江戸末期から受け継がれてきたガラス工芸、江戸切子の職人技を紹介したもので、自社で企画から撮影・編集までを手がけました。

今後の展望についてお聞かせください。

弊社のサイトは更新頻度が高く、オリンピックやワールドカップのときは24時間態勢で情報を発信してきました。それに、利用されるお客様から「切り口がおもしろい」という評価をいただきます。写真好きなオタクばかりが集まっているので、写真に対する愛情や「楽しい」という気持ちがサイトにも出てしまうのでしょう。「写真をどう使うか、どう伝えるか」という写真への想いが大切です。
これまでにもいくつか転機はあったのですが、それをなんとか乗り越えられたのは「好きなことをやろうよ」という姿勢を通してきたから。その「好き」な気持ちが集客性につながればいいのですが、これがなかなか。業界で一番、ビジネスライクにやっていない会社なので、生き延びられるかは心配ですけど、そこがウチのいいところでもあると思っています。


青木紘二(あおきこうじ)青木紘二(あおきこうじ)

Profile
株式会社アフロ代表取締役社長。20代でスイスに留学、スイス連邦公認国家スキー教師の資格を取得。スイスをベースに、カメラマンの仕事を開始。1980年に株式会社アフロを設立。1990年に帰国。1998年に長野オリンピック・パラリンピックの公式写真集を発行。以降の夏期・冬期のオリンピック・パラリンピックの公式写真集を手がける。
http://www.aflo.com/